第25回石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞の公共奉仕部門大賞の授賞式

第25回石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞の公共奉仕部門大賞の授賞式

2025年12月5日、第25回石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞の公共奉仕部門大賞の授賞式がありました。大変恐縮ながらシリア取材の兼ね合いで出席することができず、前作に続いて本書『移民・難民たちの新世界地図:ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録』を編んでいただいた新潮社の担当者、竹中さんにご出席いただきました(ありがとうございます!)。

ちょっと長文になりますが、受賞あいさつで代読いただいたメッセージを下記します。

このたびは栄えある賞を頂き、心よりお礼申し上げます。本来なら出席して直接ご挨拶すべきところですが、アサド政権崩壊から一年を迎えるシリアでの取材のため、帰国できなかったことをお詫び申し上げます。本日は、この本を一緒に編んでくださった新潮社の編集者・竹中さんを通じてご挨拶申し上げます。

この本は、ロシア軍のウクライナ侵攻前後の欧州大陸とその周縁で、不条理を背負いながら命がけで旅する人たちの足跡を追った記録です。私にとっては新聞社を辞めてフリーになり、オランダに拠点を移した直後の出来事でした。ベラルーシとポーランドの森に新たな移民ルートが現れ、やがてロシア軍のウクライナ侵攻へ。数百万人の避難民とともに、世界中にあふれ出したモノ、カネ、情報の奔流を追って、ウクライナに半年、そしてヨーロッパ、地中海、アフリカを半年旅し、六百人と向き合いました。

遺体が放置されたブチャ、凄まじい腐臭を放つ集団墓地など、凄惨な光景の一方で、最前線に近い町の公園では、母親が子どもを遊ばせる穏やかな日常も目にしました。しかし声をかけると、「占領地域の両親と連絡が取れない」「家に残った夫が心配で…」と泣き出してしまう。通訳をしてくれた地元女性にも「自殺を考えていた」と打ち明けられました。多くの人たちが、どこにも届かない思いを胸にしまい込んでいました。

権力者の大きな声や偽情報、扇情的な言葉がネット空間を覆う今、ジャーナリズムの役割の一つは、声なき声、届かぬ思いを受け止め、目の前の光景を記録して届けることだと改めて感じています。自国、あるいは自分だけを優先する風潮が強まり、世界で、そして日本でも移民・難民への風当たりが強まるなかで、「なぜ人は命をかけてまで旅をするのか」、その奥にある思いや不条理を伝えていきたいと思っています。

現場に行かなければ聞こえない声、見えない光景、手触り、におい、そして味わい。五感すべてで取材し、あらゆる方法で伝えていく。フリーになって以来、悩み、惑い、試行錯誤を続けてきましたが、今回の受賞は「このまま進んでいい」とポンっと背中を押していただけたように感じています。

これからも取材の旅を続けていきます。本日は本当にありがとうございました。

提供:早稲田大学